※警告※ この作品はアスランが薬を使用しています 苦手な方や嫌悪を覚える方はこのまま何も見なかった事にして そのまま引き返すのをおススメいたします 又、この作品はクライン派やキラ、ラクス、カガリに優しくないものとなっています 以上の警告を無視して苦情等は一切受け付けません そんな事は気にしないわ!! という素晴らしいお嬢様方はどうぞ、このままお進み下さいませ 爆弾やなんかよりもドラックの方が人間を滅ばせるのかもしれない―と誰かが言っていたような気がするがまさにその通りなのかもしれない 初めは好奇心 理由は人それぞれなのだろう 同じ好奇心でもそれは面白半分の人もいれば 何も見たくなく現実逃避をしたいと考えていた人もいるだろう しかし一度、手を付けてしまえば そこからは地獄だ 逃げ道がなくなっていってしまう 最初は薄いもの何かの液体で薄め、なにかの飲み物へ入れる それだけではいつか効果が薄くなったと感じ、更に強いのへと変わってってしまう 又は他の仲間に誘われて 彼―アスラン・ザラ―もまたドラッグへと手を出してしまった 彼の性格から考え己から積極的に手を出したとは考えにくいがキッカケができてしまった 薬に頼らなくてはならないような生きていけない、壊れてしまいそうな程に彼の精神は病んでしまったのだ 最初はドラッグではなく睡眠薬 あのヘリオポリスでのキラと再会、言葉を交わし、拒絶されてから眠らなければいけない時間帯に眠れなく睡眠不足になっていた 頭痛に襲われアスランはミスを連発してしまい表情では分かりにくいが焦ってしまっていたのかもしれない このままでは支障をきたし、足付きの追跡も外されてしまうかもしれない―と 医療室へ行けば簡単に睡眠薬が手に入ってしまう アスランは医療室の戸棚から軽めの睡眠薬を取り出すと部屋へビンごと持ち帰り飲み続けた 容量を守っていたのは最初だけ 身体が慣れてしまえば効果は薄まり飲む量は増えていくばかりだ しかしそれ以上の強い睡眠薬は手を出そうとはしなかった 睡眠薬を使えば思考が遅れる場合がある まるでまだ目覚めから覚醒していないように アスランはそれを周囲に気付かせるようなヘマはしなかったが、気付かれてしまった 仲間であり、大切な存在でもあるイザークに 「おい」 「・・ん、あぁイザーク。何?」 アスランが部屋のベッドの上で考え事をいていた時にドアの開く音が微かに聞こえ振り向くとイザークは片眉をピクっと動かせベッドの傍にある机の引き出しを開いた 「イザっ、何してるんだ?」 制止の声を掛けてもそれが聞こえないようにイザークは黙々と引き出しを開けていき 目当ての物が見つかったのか、ソレを見てようやくアスランの方へとその瞳を向けた 「なんだ、コレは・・・」 イザークがさしたコレ、とは捨て場に困ったのであろう睡眠薬の空のビン いや、ただの睡眠薬のビンならば何の問題もないのだ だがしかし、そこ―アスランの部屋―から出てきた空のビンは5〜6本 数日前には無かったソレは誰がみても睡眠薬の獲り過ぎだとわかる アスランは気まずそうに視線を下に下ろしイザークを見ようとはしない 一番、知られたくない人物に知られてしまった気まずさ 自分の弱さ、醜態を見られた気まずさ いつまでも言葉を発しようとはしないアスランをイザークは抱き締めた 思いがけない温もりに戸惑い 言葉が出て来なかった ただこの温もりがどうしようもなく痛くて苦しくて涙が溢れた この時のアスランが情緒不安定だというのは誰がみてもわかったであろう 子供をあやす様に頭を撫でられているアスランは何も言わずその行為に甘えイザークに縋っている 他人を拒絶しながらも温もりを欲しがり泣いてもいい場所を探しているように感じられた 人間ならば当たり前の心理かもしれないがアスランはそれを実感し自覚することもない 「コレは俺が預かっておく。欲しかったら俺の部屋まで来い」 普段の彼からは想像も出来ない静かで穏かな声で囁くように喋るイザークの言葉にアスランは何も言わず頷いた ソレを理解しているのかはその時のイザークには分からなかったが ほおっておけないと思ったのだ それ以来、アスランはイザークの気持ちを知ってか知らずかそれは分からないがイザークの言った通りに欲しくなればイザークの部屋へ訪れていた 最初はからかっていたディアッカだが事情を薄々感ずいたのか何も言わなくなり アスランにしばらく部屋を交換しないか―と提案してきたのだ それからはアスランの様子をディアッカが見る限り大分、良くなったのだろうとディアッカは思う よく見ていれば感情が乏しく感じさせる奴も本当はただ感情を表に出すのが苦手なだけなのだと分かった それが分かったのはつい最近のこと それを思うとイザークは最近ではなくずっと前からよくアスランを見ていたのだろうと勝手に理論づけ見ていた雑誌に思考を戻した その同時刻アスランはイザークと同じ部屋となり睡眠薬の量がかなり減ったと自覚していた 前は一日に一回…それも結構な量を飲んでいた しかし今は、イザークの傍にいる時は一週間に一回…それも量も守っている 実際はイザークが渋がって中々くれないのだが それでも自分でも睡眠薬がそう前まで絶対に欲しいというわけでもない 怖かった闇も今はそうでもない 闇が怖いのは思い出してしまうから ラスティ ミゲル ・・・キラ・・・ 今は暖かいから イザークが与えてくれる温もりが暖かいから怖くないのだろう 依存してしまうのかもしれない いや、本当はもう依存してしまっているのかもしれない 迷惑かもしれない そう考えるも今はこの温もりだけがアスランの唯一の安心して寝れる場所 その腕を手離したくはないと思い また離れ辛くなってしまう その日、イザークは潮風に当たりながら思う イライラする、と アスランをほおっておけない、守りたい そう思うのも事実 しかし最近のアスランを見ているとどうしてもイライラしてしまう 不安定だからではない アスランが縋るのも今は自分だけだと思うと嬉しく思う しかし一つの存在にイライラする ―ストライク― 詳しくは知らない が、しかしアスランがあのストライクのパイロットと何らかの面識があるのだと核心してしまっていた あの存在が無性にイザークを苛立たせる だからワザと時々、言ってしまうのだろう 確信に触れるか触れないか 周りの奴らに感づかれるか感づかれないかのギリギリのラインの言葉達 それが僅かながらにもアスランにダメージを与えているのは分かる その言葉を言った日のアスランはどこかコチラを伺っているように思う 不安気に瞳を揺らして イザークは己は何がしたいのかわからなくなり余計に苛立ってしまうのだろう だからと言ってアスランを突き放す事は出来なかった 突き放したら壊れてしまうかもしれないと僅かな確信をもっていたらから 心は穏かになり切れはしないが守りたいとは思った 数日が経ちイザーク達は地球―砂漠―へと落下してしまったが アスランの心は何時も通りのまま 確信しているから 無事でいると 気掛かりなのはあの顔の傷のみ 後は大丈夫だと不思議に確信している己にアスランは薄く笑った そしてアスラン達も地球へと降下しイザーク達と再会してやはり笑ってしまう いつもと変わらない彼等 それがとても安心できる アスランは願うこのままがいい、と そしたら笑っていられる そしてイザークも思う 穏かなアスランを見てこのまま薬から完全に離れてくれればいい、と しかし願いは叶わずドラッグに手を出してしまう事件が起きてしまう 戦友―ニコル―が敵であり幼馴染―キラ―に殺された そしてアスランもまた、キラを殺そうとしてしまった いや、この時は殺してしまったのだと思い込んでしまっていた そして存在する二つの感情 仲間を殺した奴を殺した喜び 幼馴染を殺してしまった悲しみ どちらも本当の気持ちなだけに整理がつけられない 殺して 誰か殺して 誰か俺を殺して お願いだから誰か俺を殺して だが死ねない 死ぬことは許されない ニコルが命を散らし守った命 それはアスランへ生きる為の呪縛となってしまったのかもしれない 「死ぬべきはニコルじゃないんだ・・・俺が、俺が、俺が!!」 ―俺が死ぬべきだったんだ 「ごめん、ごめん、ごめんなさい・・・」 ―ミゲルも俺が殺したようなものだったんだ 「仲間を殺してまで俺は生きていていい人間なんかではにんだ・・・」 ―だから俺なんかのせいで死んだりしないで ポツリ、ポツリと吐き出されていく言葉 追い詰められていく心 そして考えてしまう 憎い 憎い 憎い 憎い 憎いはずなのに憎みきれない自分 胸の中で渦巻く思い 仲間は本当に大切だ しかし3年前の事がどうしても頭に過ぎってしまう そしてラクスにより聞かされた言葉 ―キラは生きています― さらにアスランは苦悩する そして手を出してしまった ドラッグに コーディネーターがナチュラルと同じドラッグを使用したことろでさして効果はないだろう しかし存在しているのだ プラントにもコーディネーター用に改良されたドラッグが それはナチュラルが使用すれば即、死んでしまうかもしれない程に強力なものでもちろん依存性も高い ラクスにキラの事を告げられた日からアスランはそのドラッグを常用するようになってしまった 薬が切れれば襲ってくる倦怠感や喉の渇き頭痛にイラつきが続く だがドラッグが効いてこれば倦怠感や喉の渇きも無くなり、いつもの倍の能力が引き出され鎮痛作用もあるようだ 気が付けば依存している己がいる、とアスランは人事のように思ってしまった 一度、使用してしまえば抜け出す事は難しい だがこの空間―クライン派―でアスランの異変に気付くものはいない いや、ディアッカには分かってしまているのかもしれないが艦が違えば何もする事は出来ない ならば誰かに、とも思われるのかもしれないがアスランを下手に刺激してしまえばもっと危険なことになるかもしれないとディアッカもまた、何もする事は出来なかった もちろん一緒にいる時は出来る限り傍で見守ってはいるつもりだが― 丁度、その時だ アスランが整備を一通り済ませるとディアッカが座っている横に腰を下ろし普段の声そのままに問い掛けたのだ 「ディアッカ・・・もしかして分かってたりする?」 「ん?あぁ、なんとなくだったけどね」 「何で?」 「そりゃ、元同僚ですから〜」 「何だそれ?」 「前と様子が違うの位は分かるよ」 「そうか」 アスランは拗ねたようにそう言うとディアッカの方へ項垂れるように頭を乗せ震えていた それは泣いているのか薬が切れかけているのか又は両方なのか分からないがディアッカはとりあえず背中を擦ってやる 「薬・・程ほどにしとけよ?」 「・・・・・・」 「お前が死んだら俺がイザークに殺されるから」 「あぁ、わかってる。俺・・言われたから・・・アイツに・・・『死ぬなよ』って」 震えながらも笑おうとするアスランの最後の境界線はイザークが握っているのかもしれない、とディアッカは思う そしてアスランに少しでもドラッグをやめさせる事が出来る可能性があるのも 恐らくは彼だけだ しばらくは安静にさせたい しかし現状がソレを許すはずもなくプラントへ放たれた核達 悪夢が蘇る 大切なモノが失われた瞬間 全てに絶望した時 身体は無意識に動き核からプラントを護る そして始まる最終戦 勝つか負けるか 生きるか死ぬか 願いが叶うか叶わないか 殆どの敵を戦闘不能にした後 アスランは微かな望みと父を止める為にジェネシスへ向かった そこで見たのは血を纏いながら宙に浮かぶ父親の姿 思考がとまり頭は真っ白になっていた 止めたかったのに もう一度話し合いたかったのに それなのに血を纏う父 どうしていいか分からないアスランだったが父の身体に出来るだけ負担を掛けないように地に下ろす その間も流れ続ける血液にアスランは「もう駄目なのか」と絶望しかその感情の中に存在しない 最後に発した言葉 それは己に向けられたものでは無かったのかもしれないがそれでもパトリックが信じたコーディネーターの幸せへの道 ―喪った者はもう戻らない―と知りながらも そしてジェネシスと止め様としようとした時に気付く 自爆スイッチと同時に最後の一発が撃ち放たれる― それは到底、一人なんかでは解除しきれるプログラムでもなく一秒、また一秒とただ時間は流れていく 下すしかない決断 ジェネシスを壊すしかない、が 他に方法が見つからない 共にいる少女をせめて巻き込まぬ様にと離すが少女はアスランの忠告を無視し付いて来たのだ 顔は見えないが泣いているのが分かる しかしジェネシスを壊すにはこの方法しかないと心の中で何度も唱えるアスランだったが少女の言葉に思考が止まる 「生きる方が戦いだ」 その少女の言葉に思いつくのは彼の言葉 『今度は俺が部下にしてやる』 ―・・・だから・・・― 『それまで死ぬんじゃないぞ』 彼がくれた優しさ 気が付いたら少女と共に脱出しアスランの瞳から涙が溢れていた もう一度だけでもいい 敵になったと言われてもいい ただ彼に逢いたい、という思いが彼を生かした 「っザー・・・クぅ」 他の誰かに聞こえるか聞こえないがで呟いた言葉は誰に届くでもなく宙に消え 涙だけが浮かんだ 幼馴染の姿を見つけアークエンジェルへと戻ると意識が朦朧とする、とアスランはふらつく 薬が切れかけているのだと自覚するも中々、言うことを聞かない己の身体に苛立つ 誰にも気付かれていなかったのにここでバレては何の意味も無い 己を叱咤しながらふらつく身体で機体から降りると懐かしい姿を見つけアスランは身体の力が抜けその場に座り込んでしまう 「イ、ザーク・・・?」 薬が切れかけているせいの幻覚かもしれないと思いながらもその名を呼べばイザークはアスランの方へと顔を向け 何かに驚いたような顔を一瞬すると小走りでアスランに近付いてきた 「アスラン?!・・・おい、お前・・・」 イザークが何かを言っているが朦朧としたアスランの思考では理解出来る筈もなく淡々とその言葉が頭の中を掠めるだけである そのまま意識が薄れ倒れ掛かる身体をイザークは支え 何事もないかのような表情でアスランを抱き上げた 「・・・・・・おい、こいつの部屋はどこだ?」 近くにいたディアッカにそれだけ言うと教えてもらった部屋へとアスランを運び ベットへ寝かせるとその部屋の棚を漁る しばらく漁っていればイザークが予想した通りのモノがその部屋から見つかりアスランの顔をみて溜め息を一つ吐く イザークはこうなる事が予想出来ていたのかもしれない もちろんソレは最初から予想できていたわけではない ディアッカから聞かされてストライクと一緒にいると告げられたあの日からこんな状況になっているのではないか、と予想したのだ 最初に薬に頼ったのはあのストライクが原因だ それに加え ナチュラル、コーディネーターどちらにも付かず この戦争を一時でも停止させ 父を止めたいと思ったアスラン しかしその最後の願いは砕かれたと言ってもいい 詳細をしるわけでもないイザークがそういう経由でこんなにまでになってしまったのかは想像するしかない しかし、それでもアスランに再び薬に走らせる理由には十分だ 最後に会ったその時から少し痩せたその頬を撫でイザークはアスランが目覚めるのを待つ 目が覚めたら一言、怒鳴ってやろうと思う ―少しは誰かに頼れ―と イザークがアスランの目覚めを待っていると部屋の扉が開き アスランの幼馴染―キラ・ヤマト―元婚約者―ラクス・クライン―そしてもう一人少女が部屋に息を切らしながら騒がしく入ってくる 「アスランが倒れたって聞いたんですけど!!」 必死になって喋るその幼馴染の声にイザークはストライクのパイロットはコイツなのかと頭の隅で思う だが心配そうにしているこの三人の様子にイザークは無性にイラついた 「・・・おい」 いつもより数段低めの声で呼びかけるとアスランの顔を覗き込んでいた三人の瞳はイザークへと向けられ次に出る言葉を待っているようだが イザークの不機嫌な様子に理由のわからない三人は顔を見合わせ先を促そうと口を開きかけた時にイザークの鋭い瞳が向けられ言葉が出なくなる 「貴様等はこいつが倒れた理由を知っているのか?」 「・・・あ、いえ・・・戦闘前は普段と変わりなかったように見えたんで・・・」 「普段と変わりなかった?・・・・・倒れた理由もわからん貴様等にアスランの事を話す必要性はない。出て行け」 冷たく言い放つイザークの言葉に三人は納得出来るはずもなく思わずキラはイザークの胸倉を掴んでいた それを大して気にする様子も無くイザークはキラの手を己から離させるとただ無言で見下ろし眉を寄せる 「普段と変わりない、と言った貴様に言ったところで無意味だ。と言ったんだ」 「そんなんで納得出来るはずないじゃないですか!!」 「キラの言うとおりだ!!黙って聞いていればよくそんな事が言えるな!!」 「私達はアスランの仲間、友人です。倒れて心配するのは当然だと思いますが・・?」 「仲間?友人?・・・アスランの体調の変化も見抜けなかった貴様等がよくそんな事を言えたもんだな」 三人から放たれる言葉達を軽く受け流すとイザークは鼻で笑い 先程よりも冷たい瞳を向け先の言葉を続けた 「貴様等はナチュラルとコーディネーターの共存を望みこの戦争を止める事が目的だったな その理念は否定はしない だがなその定義を掲げる前に友人だと言うならその友人の体調の変化・・・精神状態を気にしたらどうだ? 自分達の足元も固められていない貴様等がそんな定義を掲げた所で犠牲になるのはその身内だ 実際、今、アスランがその犠牲者だ 貴様等のその曖昧な態度、言葉で誰もが傷付かず付いて行くと思ったら大間違いだ 己の正義は誰も傷つけないと思うなよ っ・・・出て行け」 「貴方の言いたい事は分かりますですが・・・」 「聞こえなかったのか?出て行け。と言ったんだ 第一、アスランを此処まで追い詰めたのは貴様が原因でもあるんだぞ アスランを切り離しもう他の男か? いいご身分だなラクス・クライン・・・」 「・・・・・・っ」 三人が何も言えなくなるとイザークは部屋の扉を開け、出て行け と瞳だけで促す 三人が出て行くと部屋は再び静寂に包まれ イザークは見つけた薬を見つめまた溜め息を吐いた それからどれ程の時間が流れたのだろうか イザークも瞳を閉じ楽な体制をとっていると微かに空気が震えた ぼんやりとした思考で瞳を開けるとアスランが瞳を開けイザークの方を驚いた表情で見ている 「・・・ィ、ザーク・・・?」 「間抜けな声だな」 掠れた声で彼の名前を言うとイザークはいつも通りの口調でいつも通りでいてくれて涙が出そうでアスランは被せられていたシーツを頭まで被りあの時以上に情けない己の姿を隠した 薬が切れて酷い頭痛がする 身体が死んだ人間のように冷たくなった感じもする 薬に頼った代価は大きい もっと欲しいと身体は欲する しかし微かに残っている理性はこんな無様な姿を誰にも見せたくない、と言っている 重ならない心を身体 あとはただ堕ちてゆくだけなのかもしれない 「おい、アスラン・・・」 「・・・・・・っ」 シーツを剥ぎ取られ出てきたアスランの瞳には大粒の涙 身体は震え嗚咽を漏らさぬようにと唇を噛み締めている 「唇を噛むな・・・傷になる」 「イザっ・・・オレ・・・っっ」 「知っている。何も言わなくていい」 「貴様は隠す場所がワンパターンで単純なんだ」 「ごめっん・・・」 「俺に謝っても何にもならん。今はプラントに帰ってそれを少しでも治すぞ」 「プ、ラント・・・に?でも俺は・・・」 「俺がなんとかしてやるだから貴様が気にする必要はない」 「・・・ん」 戸惑いながらも素直にイザークの申し入れを受け入れたアスラン 今の状況でプラントに戻ればどうなるかはわからない 父の変わりに罪を償うのか 裏切り者として殺されるのか だがアスランが一番に心配したのはイザークとその母親の事だ 彼の母親は己の父を支持し今はおそらく拘束されているのかもしれない ならばイザークが本当に守るべき者は母親なのかもしれないのだがそれでもイザークはアスランの事を『なんとかしてやる』と言ったのだ 駄目なのかもしれないが安心してしまう フイに抱き締められアスランは身を強張らせたが久々の温もりにまた涙が溢れる あれから涙など誰にも見せなかったのに今はこの温もりに涙が溢れてしまう 抱き締められた温もりが愛おしくて何かに救われる感覚にアスランは無意識にイザークの背へと腕を回した それでもこんな己は認めたくないと言わんばかりに―そういえば薬物中毒者は情緒不安定になる―と朧気な記憶を探り当てた 建前があればどんなに甘えても後でなんとでも理由を付けられる だが今だけはこの温もりに少しでも甘えたかったのかもしれない 「アスラン・・・何もかも溜め込むな。言いたい事があるなら今の内に吐き出しておけ」 「・・・っっ・・・ぁ、俺・・・」 「・・・怖か、った・・・ミゲルやラスティが・・死、で・・地球軍・・・ナチュラルが、本気で・・・憎かった っで、も・・・スト、ライクの・・・パイロッ・・っ・・俺の・・・おさなな、じみ・・・で・・・・ニコ、ルが俺のせ、で・・っ・・・ なのに・・・キラ、を・・・・憎みきれ・・なくって コロシタ・・はずなの、に・・・ラクっ・・・・・・が・・・・生きてる、って・・・・ 父も・・変わって、しまっ・・・て だから 怖く、て 恐、くて コワく・・・て 逃げ・・たかった・・・」 「・・・そうか・・・」 アスランが詰まりながらも紡ぎだす言葉をイザークは相槌を打つだけで何も言わないがそれがとてもアスランにとってラクで心地よかったのだ 一度吐き出したら止まらない言葉達をアスランが紡いでいくが頭で整理する前に出された言葉は時折、理解に苦しむがそれでもイザークは静かに受け止めアスランの気の済むまで話させてやった 思っている事を何も言えずまた溜め込めば自身を追い詰め薬に走ってしまう 言いたい事は言えばいい 辛いなら泣けばいい 苦しいなら吐き出せばいい そんな当たり前の解消法が出来ない それだけで人は追い詰められていく それは例え遺伝子を改良されたコーディネーターでも同じこと 言いたい事は全て吐き出したのかアスランは身体を震わせながらイザークの服を握り締め離れようとはしない イザークも無理に離す気はないのだろう そのままの状態でこれからの事を巡らし 抱き締めていた腕により一層の力を込めた 君が今の支え 君が今の癒し 君が今の現実 君がいないと怖くて 恐くて コワクテ 誰かの想いに必死に応えようとして 強くならないといけなくて 優しくしていないといけなくて 弱音なんて吐けなくて 君だけが 君だけがありのままでいいと言ってくれる 強く無くていいと言ってくれる 普通でいいと言ってくれる 弱音は吐けと怒ってくれる たったそれだけの違いなのにこんなにも こんなにも 安心できでラクになれるんだ END アスランの変化はアスランをよく見ている者 大切に思っている者しか気付かない 気付かせない |