傍にいて欲しいと願った
彼の言葉が欲しいと願った
苦しみの尽きないこの世界に疲れてしまった

もう『生』も『死』もどうでもいいと思うようになってしまっていた
ただ、此処に存在しているだけ
それだけだ

此処に存在しているのは微かな希望がまだこの胸の中に存在しているからだろう
まだ願う事を
まだ求める事を
まだ叫ぶ事を
諦めてはいないからだろう

『死ぬなよ』

それが、今のアスランを支えているもの
それだけがアスランを此処に存在さえているもの

それが唯一の希望であり
それが唯一、求めるもの

















































『ドラッグ〜]V〜』
















































ダルイ身体で外に出る気も起きずにアスランは自室のベッドの中で、このまま消えてしまいそうな程に儚く
静かに瞳を閉じ
眠りについている
いつもであれば、意地でも身体を動かし普通を装い振舞うのだが
今日は休暇だと記憶していたアスランは朝に食堂にも行かずにベッドの中で過ごしていた

今は丁度、昼時で皆は食堂に行っているのだろうか
食堂から遠いアスランの部屋の近くの空間はシン…っと静まり返り
まるでその空間のみが他の空間になってしまっているようだ

アスランの眠りは浅いのか意識が浮上し現実に何度か戻されるのだが
身体はまだ睡眠を求めているのか、瞳は重く
まだ寝足りないと言うかのように指先さえも動かす事が重く感じてしまう

それが、身体が本当に睡眠を求めているからなのか
それとも精神が現実に戻りたくないと身体に訴えているのか…
それしか選択肢は無いのだが
もう考えたくないとアスランは思考を進めるのを止めてしまった
それは今、考えを放棄しただけだと思われるのだろうが
今のアスランの状態を考えると意思を持つのを放棄してしまいそうな印象を受けてしまう

確かにアスランは此処に存在している
此処で生きている
だが、意思を放棄するという事は『生』ではなく『無』となってしまう
それは生きながらに死んでいる
そう思っても間違いではないのだろう

アスランの瞳は開かないまま時間だけが刻々と過ぎてゆき
身体は確実に弱っている

生きているが死んでいる
それは彼が望んでいる仲間が望んでいる生き方ではない
痛いほどに分かっているからこそ、考えを放棄しても
他の事で微かに思考が働いているのだろう
それは仲間の為
それは彼の為

それは自分自身の為

アスランの瞳からは一滴の涙が頬を伝い
藍色の髪を濡らした


















































アスランが目覚めたのは今度、停泊する基地に着いた時であり
部屋から出てみればルナマリアがアスランに興奮気味に話しかけ
何かを必死に伝えようとはしているのだが
興奮からだろう
ルナマリアは話の主旨が抜けており、アスランは首を傾げ
理解するにはどうやら、ルナマリアに付いていくしかなく
重い身体を引き摺るようにしながら向かったのは、MSデッキ

新しい機体でも来るのだろうか…?

人を殺しながら人を護るモノ…

扱い方一つでそれはいくつモノ顔を持っている

MSデッキに来てみれば、やはり…
と言うべきなのだろうか
見慣れない白と黒の機体
確か白いMSの方は指揮官クラスの人間に与えられるモノである
自分に新しい機体が来るなどの報告は受けてはいない
ならば、誰かが新しく…少なくとも指揮官クラスの人間が此処に来るのだろうか

アスランは2機のMSを見上げながら、どこか他人事のようにそれを眺めていた
隣ではルナマリアが興奮気味に何かを話しかけているのだが
それを聞く気力さえ今はないのだ
悪い…そう思いながらもこの身体の脱力感はそう簡単に拭えるものでもない

整備班の者達はこれが誰のモノか知っているのだろうか
ルナマリアと同じ位に興奮しており、2機のMSを尊敬とも憧れとも見える眼差しで見上げていた
アスランも確かに興味はそそられるのだが、それよりも身体も脳も休息を望んでいる
あんなに休んだ…眠ったはずなのにまだ足りないと言っているように
身体の脱力感抜けることが無く
今はその重い身体を必死に立たせている状態でもある

しかし、艦長と話をしながらやってくる人物をアスランの瞳が捕らえ
その相手もアスランをそのアイスブルーの瞳で捉えた瞬間…

















































確かにアスランの中での時間は止まり
静寂に包まれていた…―

















































忘れはしない
忘れられる筈が無い
目の前にいる人物
プラチナブロンドのストレートに
空をそのまま映したかのような意思の強そうな瞳

忘れるはずが無い
自分はずっと彼に逢いたかったのだから…―

「………ぃ…ザーク…」

何故、此処にいるのだろう
彼は今は宇宙の筈だ
それが、何故…

しかし、ソレよりも大きく膨らむ感情
逢いたかった…
声が聞きたかった
傍にいて欲しかった
話を聞いて欲しかった

他の誰かではない
彼に…

「アスラン…」

イザークがアスランの名前を呼べば
翡翠の瞳からは涙が一粒、零れ
プツリ…っと今までアスランを動かしていた糸が切れてしまったかのだろうか…
アスランの身体は力が抜けたように倒れ
眠りにつくかのように瞳は閉じられてしまった

その時に流れたアスランの涙はシン達が見たのとは何かが違う
戸惑いと嬉しさが混じった涙

倒れる…

誰もがそう思っただろう
しかし、倒れるような鈍い音はせず
アスランの方を見れば倒れそうになったアスランの身体を自分の腕の中にしまい込むように抱き締めているイザークの姿があったのだ
それは、労わる様に
それは、護る様に
それは、慈しむ様に

イザークは最後に会った時よりも肉の落ちてしまった頬に伝った涙を
指先で拭い、それは言葉にはならず
その場にいたクルーだけではないディアッカでさえ気付かなかったが
しっかりとその唇は言葉を象っていた

『遅くなってすまなかった…』

と…

あの時よりも痩せてしまった身体に食事を抜いてしまっていたのだろうという事はすぐに分かってしまう
だが、これは簡単に予想できた事でもある
イザークの表情は苦虫を潰したかのように歪むが
それは一瞬の出来事
よく見ていなければ、誰も気付かないであろう

その光景を眺めて驚いているのは、此処にアスランを連れてきたルナマリアだけではなく
ルナマリア達の後からMSデッキにやってきたシン達もである
決して他人には自分の弱さを見せようとしないアスラン
いや、一度だけシン達に弱さを曝け出した事もあったが
あれはアスランが混乱している時であり
それ以外では決して見せようともせず
そして、誰かに頼る姿さえ見られなかったアスラン
そのアスランがイザークの姿を見つけた途端に瞳から涙が零れ
身体の力を抜いたかのように倒れたのだ

それはアスランが本当に信頼している証だといってもいいのだろう
イザークの腕の中で意識を失っているアスランの表情はまるで眠っているように…
いや、眠っている所でさえあんなに穏やかな表情だった事は此処ではないだろう
信頼している
安心できる相手だからこそ見せられる表情
シンはアスランが穏やかになれる場所があって嬉しい…
そう思いながらもどこか寂しさを感じたのは恐らくは気のせいなんかではないのだろう
自分が守りたいと思った
その為になら修羅にでも何にでもなると…
しかし、アスランはそんなモノは望んではいなかったのだ

そう気付いたが、それはもう後の後悔
今まで自分がしてきた事を思い返せば、また前のようにアスランに接する事は難しいのだろう
嬉しいと思う心と
寂しいと感じる心
二つの思いが交差して気持ち悪いとさえ思ってしまう

「おい、アスランの部屋は何処だ」

「へ、あ…ご案内します…」

突然、発せられた言葉にマヌケな声を出してしまったが
イザークの瞳はシンを捉えている
つまり、指定されたのはシン
何故、自分が指定されたのだろうか…
そう考えるが考えるだけ無駄なのだろう
イザークがアスランを抱えると何も言わずにシンが指し示す方へと足を進めた
ディアッカは肩を竦めながら、一連の行動に動揺を隠せないクルー達に向かい
自分の仕事に戻るように言うと、その場に残されている
艦長
レイ
メイリン
ルナマリア
はディアッカに何かを聞きた気に視線を向け
ディアッカは面倒臭そうに頭を掻きながら苦笑を浮かべるしかない

















































静かな廊下で聞こえるのは二人分の足音しか無く
二人が言葉を交わそうとする気配は一切ない
何かを言われると覚悟していたシンも何も言う気配の無いイザークに少しばかりの居心地の悪さを感じてしまう

「……っ…ざ…ぃザー…ク」

「アスラン…」

静寂を破ったのはアスランの苦しげな声であり
それに応えるのはイザークの声
それは当たり前なのだが、あのジュール隊の隊長が此処にいる事実を自分でさえ疑ってしまうのだ
アスランならば隊長の立場であるイザークの忙しさを理解しているだろう
それならばシン以上にイザークが此処にいる事が信じられるにいる筈である

しかし、確かにイザークは此処にいるのだ
アスランを心配して
忙しい筈の仕事を調整してまで…
もしかしたら、途中の仕事を投げ出してきたのかもしれない
だが、イザークが途中で仕事を途中で放棄するような人物には見えず
恐らくは無理矢理にでも調整したのだろう


「シン、と言ったな…迷惑をかけた」

突然掛けられた言葉にシンは一瞬、言葉を見つけられずにいたのだが
イザークの『迷惑をかけた』の部分には即座に反応したのだ

そう、迷惑なんかではなかったのだ
最初はアスハの護衛をしているアスランが気に食わなかったのは事実である
しかし、ザフトに復帰し
目の前で見せられるアスランの実力と正確なアドバイスに
いつしか憧れの念を抱いていた
そして、弱ったアスランを見た時に『守りたい』そう思ったのだ
それは憧れを越した感情なのだが、今だその感情は不透明であり
名前が見当たらない

しかし、迷惑ではない
それだけはハッキリと言える事実であるのだ

「迷惑なんかじゃありません!!
迷惑なんかじゃ…
俺も何かしたかったけど…その人が望んでるのは俺の助けじゃないんです…
その人が本当に幸せそうに笑えるのはきっと……」

「………誰かの為に何かをしたい…
そう考えるまでは褒めてやる
だがな、今のアスランの状態ではまずコイツの意思を最優先にしてやれ
それに、コイツは大人しく人の好意を受け取ろうとはしない
俺でも本当に望まれているのか分からなくなる時もある

もし、本当にコイツの為に何かをしてやりたいのであれば…
コイツの意思を最優先にしてやれ
それだけでいい
それに少なからずコイツは生きている
それは貴様等のお陰だろう…
もう少し自信をもってもいい
それに、貴様はアスランの身を案じて危険を冒してまで俺に連絡をしてきたのだろ…」

否、正確にはあの少女なのだが
シン達の説明でアスランの状況を掴めたのだから
イザークの言葉は間違いではないだろう

















































『此方はボルテール、ジュール隊、隊長イザーク・ジュールだ
何故、こちらに通信を入れたのか伺おう』

決して相手を威圧している訳ではないのだが
どうしてもそう聞こえてしまうのはイザークの性格の所為なのだろう
実際、今も威圧している訳でもないが相手の通信者が微かに息を飲んだのが雰囲気でわかる
暫らくの沈黙
元からアスラン以外の者に対して気の長くないイザークは苛々したように舌打ちをすると
相手もこのままでは通信を切られてしまうと判断したのか
意を決したように話だしたが、声は女性…いや少女であった

通信コードを見れば、通信を入れてきた艦はボルテールからかなり遠くに存在している艦だというのが分かる
通常であれば離れていれば離れているだけ
いくら自軍の艦同士といえども通信は簡単に出来るものではない
恐らくは色んな所を辿って通信を可能にさせているのだろう
だが、流石に映像が送られる事は無く
音声のみしか通信出来ないようでもあった

後で分かった事なのだが
その通信コードはボルテールに通信した事が分からないように
色々と細工されており
通信者がそういった技術に長けているのが分かる

その通信者は言葉を探すように何か単語を口にしては黙ってしまうのだが
それでも、何かを必死に伝えたいのだという事は理解出来た
そして、ようやく紡がれた言葉に溜め息を一つ吐くのだが
何か胸騒ぎのような
コレを聞いておいなければならないような予感は今だ消えていない

『あ、あの…私はミネルバ所属のメイリン・ホークです
急な通信で大変驚かれたと思うのですが、どうしてもジュール隊長に言っておきたい事がありまして…その…えっと…』

『用件なら手短に頼もうか
生憎、此方もそう暇ではない』

『あ、アスランさんの事なんです!!』

少女―メイリン―から発せられた人物の名前に動揺したのはイザークだけではなく
その場に居合わせたディアッカも飲みかけのコーヒーを置くと
真剣な眼差しで画面の方…正確には少女の声に神経を集中させた

この予感はこの事だったのか…
と妙な所で納得せざる得ないイザークなのだが
あの嫌な当たって欲しくない予感はどうやら的中してしまっているようだ

『アスランの事…だと』

『はい…あの…アスランさん、前の仲間…フリーダムに…機体を破壊されちゃって…
アスランさん自身に怪我とかはないんですけど…その…
うまく説明出来ないんですけど…なんか違うんです
すごく今、弱ってて…
でも、私達じゃどうしていいのか分からなくて…
そしたらアスランさんがジュール隊長の名前を言ってたので…それで…っっ』

『そうか、アスランが何をしてるのかは分かってないんだな…?』

『えっと…シン…とレイが…知ってる…かもしれないですけど
私には詳しくは教えてくれなくて…』

『ならば、その『シン』と『レイ』には今、替われるか?』

『あ、はい』

『それで、そいつらがお前に言いたくないのであれば席を少し外していてもらおうか
出なければアスランの状況が聞けん』

『あ…はい、分かりました…』

それから聞こえるのは扉が開く音の後には何の音もせず
今は一緒にいるわけではないのだ、という事は簡単に予想がつく

しかし、アスランは心を許した相手以外に自分の弱さを見せようとはしない
そのアスランが確信に迫られてないとはいえ
他人に勘付かれる程に弱っている…という事なのだろうか
イザークは苛立ちを抑えられずに舌打ちをすると
自分の不甲斐無さを呪った

確かにアスランがこの状況で何もせずにいられないのは分かっていた
故に危険だと思ってはいたが、アスランが望むままの行動をとらせていたのだ
しかし、もし自分が一言
ミネルバでは無く自分の所に来させていたのであればこの状況は回避出来ていたのかもしれない
ディアッカも同じ心境なのだろう
もっとイザークに言っていれば
それ以外でも、自分達からアスランに連絡を頻繁に入れていれば…
そう考えるとキリが無いのだが、そう思わずにはいられないのだ

再び、聞こえた扉の開く音に
飛んでいた思考を強制的に戻させ、向こうからの言葉を待てば何かを言い合っているようにも聞こえた

『ジュール隊長…メイリンです
シンとレイを連れてきました』

『あぁ、手間を掛けさせた』

『いえ、私はアスランさんが前みたいに笑って欲しいんです』

『…ってメイリン…お前本当に…』

『だから言ったでしょ
ジュール隊長に通信入れてるって…』

『悪いが、俺も暇ではない
早速本題に入らせてもらいたいのだが…』

『あ、はい…じゃあ私は失礼します』

もう一度、聞こえた扉の音にメイリンが部屋を出ていったのだろが
メイリンに連れて来られたシンとレイから言葉を出される事が無く
暫らく沈黙が続いたのだが
それを壊したのは誰でもないイザークである

『おい、先程も言ったが俺も暇ではない
あの女から聞いてないのか
俺はアスランの状況を知りたいんだ』

『あ、はい…すみません…
俺は、あの人…いえ、ザラ隊長が部屋で倒れているのをたまたま見かけたのが最初でした…
ソレ位から様子がおかしくなって…
………ザラ隊長がリスカを…』

『シン、俺から説明する
私は今回の作戦の事でザラ隊長の部屋を伺った時に気付きました
鍵も掛かっておらず
勝手ながら、部屋に入りましたら隊長が腕から血が流れている事に気付き
片方の手に剃刀を持っておられたので御自分で切られたのだと思います
応急処置はしたのですが、その時は私しかおりませんでしたので救急処置以外は何も出来なかったのですが
途中からシンも来ましたし、手当ての為に医務室から救急セットを持ってきてもらおうと思ってのですが…
隊長が手当てをするのを拒絶し
その時は…フリーダムに機体を破壊された後でしたので錯乱していたのでしょう…
已む得ず、軍医から貰っていたらしい精神安定剤を使用させて頂きました』

『…そうか…』

イザークは眉間に皺を寄せながら目頭を押さえると
溜め息のように息を吐き出し、自分の机の上に置かれているフロッピーを見た
後で数日、徹夜をすれば終らない量ではない
そう判断したのだろう
ディアッカに視線を送れば、イザークが考えている事が分かっているのか
肩を竦め

『行くしかないだろ…』

と言葉には出さなかったのだが
口の動きだけでも理解出来る
元より、自分一人でも行くつもりでいたのだが
ミネルバの他のクルー…艦長への説明は少々、面倒なものである
ならば、その説明役としてディアッカを連れて行けば
その分、自分はアスランの傍にいてやる事が出来るだろう

『おい、今はミネルバは何処にいる?』

『え、あ…作戦も終了したし…』

『作戦も終了しまして、本艦も少なからず攻撃を受けています
なので、恐らくは修復作業の為に停泊すると思われますが…』

『ならば、それが何処か教えろ』

『え、何で…ですか?』

『俺とディアッカが降りる
あの女にそう言っておけ
一応、上層部に通信を入れておくが、その通達よりも先に降りるかもしれん
俺からミネルバに連絡も入れるが、貴様等の方でもそう言っておけ』

『えっ…ちょっっ…いきなり…』

―……ブツっ―

話が終ると通信を切った後のイザークの行動は素早く
上層部に連絡
急ぎの仕事を片付けると部下達にこれから数日離れる事とその間の指揮権を艦長に託す事を言い渡すと
愛機をシャトルに乗せ
自分達も乗り込むと
地球へと降りてきたのだ




















































その行動の早さにシン達が驚いたのは言うまでもない
あの通信を終えてから基地に到着した時間はそう遅くは無い
それにも関わらず、基地に到着してから数時間も経たない内に二つの機体がミネルバに乗り込んできたのだ

そして、ジュール隊長を見た瞬間のアスランの戸惑いと嬉しさの混じった表情
そして涙を流し
安心して力が抜けたように意識を失ってしまった

シンはそんなアスランの表情など見た事もなく
自分のしてきた事を思い返せば、自分の行動は間違っていたのかもしれない
そう思うしかなかった

「ジュール隊長…
俺…少し…間違ってたかもしれません
その人の為とか言いながら
俺はその人が苦しむ事しかしてませんから

…だから…」

「謝りたいのであれば自分の口で言え
アスランはボルテールに連れて行くが…
貴様はフリーダムを倒した事でフェイスの称号を与えられるのだろ
言葉一つですぐにこちらへ来れる
だから謝りたいなら自分で言え
俺はそこまで優しくはない」

いつの間にか着いていたアスランの部屋のドアが開くとイザークは迷わずにシンの横を通り抜け
アスランの部屋へと入っていった

外に残されたシンはそのドアを見つめ
溜め息と苦笑を漏らした

勝ち目が無い
そう実感してしまったのだ
キラを倒すと決めたのも
その為にアスランに憎まれようとしたのも
アスランは望んでなどいなかっただろう
しかし、それを行ってしまったのは
ただの自己満足であり
アスランの意思など考えてさえいなかったのだ

厳しい人だが
アスランに対しては全てを包み込むように接している
本当に僅かでしか話していないが
そう思えるには十分な時間であった

間違えたのであれば
道は戻る事は出来ないが
そこから修正していけばいい

シンは持ち前の前向きさで
そう思うと来た道を戻っていった…





































ようやく逢えた
ずっと逢いたかった人
ずっと求めていた人

傍にいて欲しくて
声を聞きたくて
言葉を聞いて欲しくて

…でもやっと…逢えた…

でもまだ信じられずにいる自分も居た
それは自分の自己防衛が働いたのかもしれない

これが、薬をしようしている所為での幻覚であったなら
これは、精神が求めすぎた所為での幻聴であったなら

今度こそ、自分は確実に壊れるのだろう…