存在しているのかわからない己 薄い氷に覆われたような平和 微笑む幼馴染にその恋人 己が好きと言いながらも婚約者のいる恋人 そして己が名乗っている名前 何もかもが夢のようで現実感は得られない 己のせいでこうなっているのかもしれないが・・・ いや、己のせいなのだろうが・・・ 『現実感』 情事後の心地よい気だるい中、隣にいる人物の温もりを確かめるようにソっと頬のラインをなぞる様に手を這わした 眠りの中にいた人物は重い瞼を開けると無表情で己の頬をなぞる人物を見つめ相手が微笑むとそれにつられるように頬を触られていた相手―イザーク―も微笑み返してやる しばらく会っていない相手が目の前にいるのだ 嬉しくないわけではない ベットから起きられないのも少々、己の身体が抑えられなかったのだからだろう アスランがイザークの部屋に訪れイザークは連れ去るように自宅へと連れて来て服を破るように剥ぎその温もりを求めてしまった 「・・・貴様がプラントに来ているとは思わなかった」 「連絡はしようとしたさ。でも生憎、お前が留守だった」 「貴様がプラントに来ているとバレたら大変な事になるぞ?」 「そう簡単にはバレはしないさ。『アスラン・ザラはオーブへ亡命している』その先入観があるから似ている人物だと思われるだけだ」 「そうか」 無理にでもイザークに会いに来たのは確かめたかったのかもしれない 現実感を 戦争が終わり―例え薄い氷で覆われたものだとしても―平和な世界で暮らしていると時々、考えてしまう これは現実なのか?―と 戦中で常に気を張って過ごした日々 今、思ってみれば仲間と気を緩んで話していた。と思っていたあの時間も無意識に気を張っていたのかもしれない それがきゅうに薄れてしまった緊張感 そして薄れてしまった現実感 だから会いにきたのかもしれない 今のアスランにとってイザークだけが現実感を与えてくれる唯一の人物なのかもしれない それは当たり前なのだろうか 親友―幼馴染―と呼べた人物はアスランの前の婚約者と一緒にいるのだ 今更、嫉妬などの感情はないが 何事もなかっかのように微笑を浮かべながらアスランに接する元婚約者と幼馴染 だが心の中では何か思っているかもしれない しかしそれがわからなければただ幸せそうに微笑んでいるように見えるだけだ それに先の戦中に熱く、高らかに語っていた平和への願いはどうしたのだろうか 停戦が決まりそれの少しの処理が終ったら地球へ降り幸せそうに暮らしている 安定していない平和 それで彼女等は満足なのだろうか それさえも分からない それも現実感を薄れさせてしまっている原因なのだろうか 一緒にいるオーブの姫の話もずっと戦争に身を投じていたアスランにしてみれば夢物語のように聞こえるのかもしれない オーブの姫の言葉はあまりにも理想が綺麗過ぎて現実味を感じさせないのだ それにあの婚約者の存在 やはりアスランは何処に存在しているのか 何の為に存在しているのか はたして自分は本当に此処に存在しているのか 自分は必要なのか なにもかもが分からなくなってしまうのだろう そして再びプラントへ撃ち放たれたと聞かされた核と ラクスの代わりに存在している人物 そして自分に与えようとされるセイバー 理解しようとしてもクルクルと色んな出来事が起こり 思考回路はショート寸前だ イザークの元へ来たことを逃げと言われても仕方ないかもしれないが今だけはそれさえもわすれてしまいたいのかもしれない 「イザーク・・・」 「何だ?」 「・・・イザークは・・・」 「・・・・・・」 「・・・いや、何でもない。それより・・・足りないな」 アスランが何を言いかけたのかは気になるところだが滅多にないアスランからのお誘いだ それを下無に出来る筈も無い 今だ熱の篭っている肌に手を軽く這わせばピクン、と反応をしめし 熱い吐息を吐く 先の行為の余韻が薄れていないのか敏感に反応するアスランにイザークは口を緩め熱い吐息が漏れる口を塞いだ 口付けを交わしながらイザークの手はアスランの薄い胸板の上を這い そこから徐々に下がりわき腹、そして蕾へと線をなぞるように愛撫を加えていく 指が目的の場所へ到達するとソコはまだ湿り気をおび触れただけで強請るように反応を示した ようやく唇が離れれば舌から舌へと透明な糸が引き アスランの瞳も潤んでいる そこで理性が飛んでも仕方ない程の色香を放つアスラン 普段、ストイックな彼からは想像も出来ない姿を今、知っているのは彼―イザーク―のみだ それが優越感に浸らせ快楽ともなる そうして二人で溺れていく SEXの中で微かに与えられる痛みはまるで受け入れられない現実に溺れるな、と言っているようだ 冷え切らないベッドの中 篭っている熱に安堵感を覚えてしまう このまま眠りについたら安心したまま眠れるかもしれない 最近、味わえなかった深い眠りに・・・ 「・・・・・・アスラン―」 「・・・ん?・・」 「お前自身が考え信じた道を行けばいい。また俺たちは戦いの道を行くかもしれない・・・しかし今のお前は民間人だ。軍人ではないお前の考えた通りに動けばいい」 「・・・イザ・・―ク・・・?」 「俺だけはお前を裏切りはしない」 重い瞼と靄がかかっていく思考にアスランはイザークの言葉の半分も理解していないのかもしれない それでも伝えられずにはいられなかった もうすぐしたらまた離れてしまうであろう温もりを感じながら イザークも眠りについた 願わくば幸せに 安心して過ごせる未来を その為に守らなくては 核とブルーコスモスから このプラントを この傷付き壊れてしまいそうな存在を END |