何が正しく

何が間違っているのか

そんな事はどうでもいい

僕の世界はただ一人の者の為に廻っている

そう、他の人間なんてどうでもいいんだ











『偽り』





アスランとも合流しキラは他人には気付かれぬようソっと微笑みを浮かべた
目の前で泣くアスランの―元婚約者―である―ラクス・クライン―
父親が死んだと嘆く少女をキラは正直どうでもいいのだろう
確かにそれはそうだ
ラクスはキラにフリーダムを渡した。それだけで反逆者と呼ばれる理由としては十分だろう

それを―違う―と言ったところで信用されるはずもない
殺される理由を己で作ったのだ
仕方もないだろう

ラクスを抱きしめたその瞳の端に捕らえたもの

―カガリとラクスの姿―

これでは意味がないとキラは心の中で毒づいた
そう、これでは意味がないのだ

「・・・アスラン・・・」

エターナルの通路で一人、歩くアスランにキラは深刻そうな顔をして話しかけた
お人好しのアスランの事だ少しだけ深刻そうに話し掛ければ簡単に罠に堕ちるであろうと誰もが想像できる

深刻そうに泣き出しそうにアスランへ話しかけるキラへ案の定、アスランはアッサリと傍へ駆け寄り本当に心配そうな瞳で見つめるのだ

「どうかしたのか?」


なんて楽しいのだろう
アスランはきっとキラの事を昔と同じまま
あの頃と同じキラだと思っているのだろう

なんて可笑しいのだろうか

まだ許せないはずなのにそういう風に誰かを心配する
アスランの大事な仲間を―殺した―キラであっても

大事な人を殺された
それはどんなに仲の良かった友達だとしても簡単に許せるはずもないだろう
頭では納得しているのかもしれない
しかし、心まではそうはいかない
複雑でわかってはいてもそれを受け付けるはずもないだろう

―ニコルを殺したキラ―

それを簡単に許せるはずもない

「・・・相談があるんだ・・・部屋で話さない?」

「あぁ、構わないが・・・」

わかりやすい程の罠
キラの表情が一瞬だけ歪んだ

昔のままだと思っているアスラン
昔の頃の姿を知っているというのは時に己の危険に繋がってしまう
そんな筈はないのだ昔のまま何も変わらないなどありえないのだから

「・・・キラ・・・?」

俯き、進もうとしないキラにアスランは不審そうに顔を覗いた
その頃には歪んだ表情も消え
アスランに―見せる―表情へと戻っている

「なんでもないよ・・・行こうか・・・」

「・・あ、あぁ・・」

―僕の世界は君で廻っている―

部屋に着きアスランは電気を付けようと壁に手を這わせスイッチを探しているとフイにキラに腕を掴まれ後ろで大人しくしていたキラの方へ振り向いた

「・・・・・・キラ?」

「・・・・・・・・・」

「どうしたんだ?」

「・・・・・・・・・」

「キラ?」

話しかけても何の反応も示さないキラにアスランは軽く溜め息を吐き
反対側の手で電気を付けようとしたがキラが急に動き出した事でそれさえも出来なくなってしまった

アスランの腕を掴んだままキラは己の所有物をしまってある所をごそごそ、と探りお目当ての物を見つけたのかニッコリと笑顔を作りアスランの足へ己の足を引っ掛け床へと転がし先程、見つけた手錠をアスランの腕に付け満足そうにキラは笑っている

たとえ部屋に電気が点いていなかろうと至近距離で微笑まれればその雰囲気でわかってしまうものだ

「キ・・キラ・・・?」

わけのわからない恐怖で身体はカタカタと震え此処でようやく理解する

―昔のままのキラではない―


震えキラの存在に恐怖するアスランの姿にキラは笑顔を深め
また再び私物をあさり出した

「待っててね、アスラン♪」

笑顔のまま答えるキラにアスランはわけも分からずただ戸惑いキラの行動を見つめるしか出来ない
今の隙に逃げ出せばいいのだが
手錠が外れず
手錠とベッドが鎖で繋がれている為、逃げるに逃げる事が出来ない
逃げようとすればただ、カチャカチャと音が鳴り手首が傷付くばかりだ

「動いても無駄だってアスランが一番よくわかってるでしょう?」

暗闇でどんな表情をしているか視覚では不明だが
口調でどんな表情をしているかはわかってしまう

きっとこの上なく楽しそうな表情をしている事だろう

カッカッと音を立てながらアスランに近付き
無駄な行動をしているアスランの肩を笑みを浮かべたまま足で踏みつけた

肩の関節が外れてしまいそうなくらいに強く踏み付けられたアスランは額に汗を浮かべ瞳には涙が浮かぶ

「・・ぅ、あ・・・キ・・らぁ?」

「アスランがいけないんだよ?アスランには僕だけで十分なのに」

話の見えないキラの言葉

何かに怒っているという事だけが事実でそれ以外の事がアスランには理解出来なかった
キラの言葉に返事を返そうとしないアスランに溜め息を吐き
ゆっくりと肩から足をずらした

ほっ、と身体の力が抜けたのも一瞬
キラが手に持っている物を見れば嫌でも身体が強張ってしまう
それがたとえ軍人であっても変わりはないだろう

精神的にも強いかもしれない
しかしそれは覚悟をしている場合のみ
いや、いつ死を迎えるかもしれない戦争に身を投じてから覚悟はあっただろう
が、親友に・・・しかも再び同じ道を歩き出した仲間に
死の危機を感じさせられるとは夢にも思わなかっただろう

キラが手に持っている物は
銀に輝くナイフ
恐らく、護身用という形で地球軍時代にもらったのかもしれない

「・・キ・・・ラ・・・?」

アスランがナイフを瞳に捕らえた瞬間キラの中で存在していた最後の線を越えてしまったのだろうか
アスランの軍服のベルトを外し
上着の前の部分を開かせると
中のアンダーの裾からナイフを入れ一気に上へ引き上げた

服の破れる音が耳に残り
興奮する

―シュッ―と言う音と共にアスランの白い肌に紅い線が浮かび上がる
一瞬何が起こったのか分からなかったアスランは己の白い肌に浮かび上がる紅い線を見つめ―ツゥ―と一滴流れ
理解した

―キラ―に切られたのだと

真っ白な肌に紅が綺麗に浮かび上がりキラはうっとりとした表情でそれを見つめた
今のキラは普通ではない
そう思っても後の祭り
どうしようもないのだ

「・・・っキ、ラ・・・」

恐る恐るアスランがキラの名を呼ぶと紅く浮かぶ上がる傷口に舌を這わせ流れ落ちてゆく血液も綺麗に舐め取っていく
血液の出てくる量が少なくなるとキラはクプっと小さく主張している果実の周りにも舌を這わせながら新たな傷を付ける
まるでブァンパイヤが血を求めるように
血を求める間も胸で小さく主張する突起には指で転がしたり摘んだりしながらも愛撫を加え
アスランの身体は痛いのか気持ちいいのかさえも判断しかねていた

キラは身体を嘗め回しながらアスランのズボンのチャックを外し下着ごとずり下げ
緩く反応し始めたソレを握り先端を親指の腹でグリグリと刺激も与えてやった

「っや、ぁ・・・キラっ・・っぁ・・めっ」

「・・・・・・・ねぇアスラン」

「っう、ん?・・・ぁ・・はぁっっ」

この行為が始まってから口数が少なかったキラがようやく言葉を発したがその声は低く今までアスランからしてみれば聞いた事もない声だった
低く何かに縋るような怒っているような声

何故?と考えたかったがそれはキラの手によって思考は散乱してしまう

元々、感度がいいのか痛みの中で快楽を見つけ出しそれに反応してしまい息も上がり考えも纏まらない

「アスランはさ・・・僕だけでいいんだよ」

「あ・・っは、キらぁ?・・・んァ」

「僕だってアスランだけだよ?あんな女なんてどうでもいいし・・・それなのにアスランはあの女なんかがいいの?」

―あんな女―あの女―というのはおそらくはラクスとカガリの事を言っているのだろうか
ならば何故―ラクスに優しくし、カガリにも優しくしてやのるか―
答えは簡単だ

「アスランを手に入れる為にラクスを僕に引き寄せたのにアスランかカガリに行くなんて予定外、ムカつくよ。僕がどんな思いであんな女のそばにいてやってると思ってんの?・・・ねぇ信用出来ないなら証明してあげようか?」

クスクスと笑うキラ
―証明―それはどうやってするのか今のアスランには考える事も無意味だろう

アスラン自身の先端から流れ落ちる滴をキラは指に絡め慎ましやかに閉ざされている蕾へ指を這わした ―ビクっ―とアスランの身体が揺れ思考がハッキリしてしまう
何をされるのか―などいくら鈍いと言われるアスランでも分かるだろう

「キ・・キラ・・・やめっ」

中へは侵入させず入り口を撫で回すキラにアスランは潤んだ瞳で見つめるがその行為をやめる気など無いに決まっている

「証明・・・ラクスとカガリ・・いや、アスランと僕の周りに存在する全てを消してあげようか・・?」

ゾクリ―とするくらいに冷たい声
今のキラなら本気でやりかねない

しかし冷たい汗が頬を流れるのを感じながらも
アスランの火照りだした身体はその先を求めている

「・・・キ、キラ・・・」

名前を呼ぶとそれが合図かのように蕾を撫で回していた指を離し
チュッ―と音が出る程度の軽い口付けをし酷く冷たい微笑をした

「ほら、これってアスランに分からせる為なんだから優しくしたらアスランすぐに忘れちゃうよね?」

―だから

「酷い方が忘れないんじゃない?」

愛されなくとも忘れはしない
キラはそれでも構わないのだ
憎しみだとしても構わないのかもしれない

アスランが傍にいて
キラ―という存在が一番であるなら

怯えるアスランにお構いなしにキラはズボンのチャックを下ろし己の自身を出した
蕾の入り口が濡れているだけの箇所に自身を押し当てるが入れる気配がないキラにアスランはやめてくれるのかと微かな希望に縋ろうとするが
キラはアスラン自身に再び指を絡め上下に扱く

「っあ・・あ、ふぁ」

前の快楽に後ろの違和感など忘れ
身体の力を抜いてしまう

キラはただ力を抜いてくれなければ慣らしてもいない箇所に入れるのは無理かもしれないと考えただけなのだ
力を抜いてしまってもらえば後は無理矢理でも挿れてしまえば構わない

キラはアスランの力の抜けたタイミングを逃さず一気に貫いた
受け入れる器官ではない箇所に慣らしてもいないのだ
入れたソコは紅い滴が流れアスランは痛みで涙がポロポロと止まらない

「っい・・・あ゛ぁあぁあっっ!!」

身体が切り裂かれるような激痛に耐えられないように声を上げ痛みを与えるキラにアスランは縋るように抱きついた
血液のお陰で滑りが良くなったソコにキラは自身を引き抜き押し入れる

まだ持っていたナイフでは傷を新たに作っていく
気のせいか少しずつ深くなっていく傷口
その流れる血液は全てキラに舐め取られその度にピリリとした痛みが走る

そうしている間にキラは思ってしまう
―腱を切ってしまえば永遠にアスランはどこにも行かない―と
動けなくなってしまえば何処にも行かない、行けないのだ

そう考えると笑いがこみ上げてしまう

「っあ・・・あ、ぁっ・・あ」

先程まで痛みで悲鳴のような声を上げていたアスランも今ではそのリズムに合わせ濡れた声を放つ

解放を求めるようにアスラン自身はフルフルと震え先端からはポタポタと快楽の滴が腹部に滴り落ちる

たとえその知識があったとしても己が女のように声をあげ受け入れる等、考えていなかったかもしれない
それも親友である者となど
ザフトにいた頃はそういう風にアスランを見る輩もいた
しかし直接、手を出す奴はいなかったのだ

蕾の奥深くに感じる熱と欲望の塊
出し入れされる度に内臓の引き攣る感覚にアスランは吐き気を覚えた
己が出している喘ぎ声も誰か他人のような声
こんなのは自分ではないと心が否定している

だが訪れる己の身体の限界
前立腺が擦れるたびにビクビクっーと身体が反応してしまう

前と後ろの快楽
アスランは受け入れるしか出来ないのだ

「ひぁ!・・キ・・・らぁ・・も、出ちゃっ・・・」

「・・・っいいよ」

「あン・・・っあ、あぁあぁあ―――っっ」

アスランは己の腹部に白獨した液体を放つと
キラの放った熱を身体の中で感じた―・・・

瞼が重く、今でも眠りについてしまいたいアスランだがキラの言葉と行動に眠りにつきかけていた思考は覚醒する

キラ持っていたナイフはくるぶしの少し後ろ
踵の少し上にピタリと付けられていたのだ

記憶が確かならばソコはアキレツ腱の存在する場所

「・・・っっ」

「ねぇアスランもしアスランが僕の前からいなくなろうとしたら此処を気ってあげるよ・・・そしたらずっと一緒でしょ?」

「・・・キ・・・ラ・・・・」

「もしあの女達がアスランに変な真似する気なら・・・・・・・コロシテアゲル・・・」

掠れた声で怯えるアスランをキラはウットリと眺めていた
暗闇に慣れた瞳であれば見えない事もない
額に貼り付いた濃紺の髪に荒い息遣い
情事後のアスランにもう一度犯したい衝動に駆られながらもそう微笑みかけた

もう僕は壊れているのかもしれない

そうでも構わないさ

君が僕の傍に存在するならば

それで構わない

そう、それだけで

ボクハカマワナインダ・・・











END