アテナ ―Athena― この神の武装姿は兜、メデューサの首をはめ込んだ盾、山羊皮の胸当ての姿でよく描かれている事が多い。 勇者の危機を助けトロイアの戦争においてはギリシャを応援した神でもあり 戦いの神であり 知性の神でもあり そして 気高く気の強い神でもあった 『虜』 ゼウスの娘にしてオリュンポス神一人、戦争の守護神にして知性の神でもある神の名を受け継ぐ―ミネルバ― だがその名に負けず劣らず神の名を受け継いでも相応しい者もこの船に乗っている 意味は同じになってはしまうが―ミネルバ―はローマ名 そしてあの人にはギリシャ名で―Athena―アテナ―だろうか もう一人の戦争の神―Ares―アレス―でも構わないのかもしれないが 同じ戦争の神であっても―アレス―は残忍非道、暴力を好み、道義心に欠けている それに同じ戦争の神であっても―アレス―は―アテナ―には勝った事はなく ―彼―は決してこの船に劣るような人物ではない 元ザフトで成績も歴代一位の彼 ―アスラン・ザラ― 黒い髪に紅い瞳の少年はその―彼―に憧れていた もしあの時―そう考えれば思いつくのは彼の成績に実績 しかし憧れていたからこそ許せなかった 仲間内からの噂で聞いていたアスランが軍に入隊し戦っていた理由 ―己と同じ―だと感じその強さに憧れたのだろう そしてその後に聞いた噂 ―アスラン・ザラ―はオーブにいるかもしれないという事 何故? 何故? 何故? ソレばかりが少年―シン・アスカ―の頭を過ぎる 矛盾した気持ちが交差するなか目の前にはアスラン・ザラ 今はあのオーブの代表のボディーガードをしている シンの両親を―コロシタ―オーブの・・・ 聞いてみたかった あのアスラン・ザラに アスランはすることも無いと与えられた部屋ではなく休憩室だろうか その部屋で窓から広がる宇宙を見つめていた 星々か輝く宇宙 ―そこで自分達は戦っていた― 「アスラン・ザラさん・・・」 声を掛けられるまで気付かなかった人物―シン・アスカ― もう軍人ではないとはいえ人が来たことにも気付かないなど迂闊だ、とアスランは心の中で毒づいた 「なんの用だ?」 誰が聞いてもその声は不機嫌だとわかるだろう それもそうだ どこの誰が己の信頼している者を罵倒され気分のいい者などいるだろうか アスランは初めにシンに瞳を向けただけでその後は瞳を向けてさえくれない それほどまでに嫌われてしまったのだろう 自覚はあるのかもしれない シンはアスランのその態度を気にする風でもなく言葉を続けた 「貴方に嫌われてしまったのはしょうがないと思ってます。しかし貴方を話がしたかった」 「・・・俺と?」 「えぇ」 シンと呼ばれる少年はオーブを嫌っている そしてオーブの代表のボディーガードをしているアスランは己も憎まれる対象だと考えていた シンの言いたい事もわかる その気持ちも だからシンを嫌っていて不機嫌であった訳ではない ただ思い出してしまっただけ 今はいない大切な友人達の事を カガリの綺麗事と言うのもわかってしまう 世の中は綺麗事を通せば渡っていけるものではないのだから しかし何故だろう? 彼はどこかキラに似ている 彼とは違うのに纏っている雰囲気が似ているのかもしれない 「・・・とても貴方と話をしたかった・・・」 「何故?」 「この変な気持ちを確かめたかったから」 「・・・・・・?」 「最初は憧れだったしかし貴方を調べている内に憧れなんて言葉以上になった。しかしこの感情の正体がわからない」 「・・・だから?」 「だから、貴方を見かけた時からこの気持ちを確かめたくて話をして貴方に触れてみたくなった」 その紅い瞳に見つめられ瞳が逸らせず身体も金縛りにあったように動けずにいる アスランは動かない シンも動かない 一瞬、時が止まったようだ 「最初はただの尊敬だった。だけどそれはアンタはオーブにいるかもしれないって聞いて憎悪に変わった。・・・だけど、この気持ちは変わらなかった」 淡々と紡がれる言葉達 痛いほどに分かってしまうアスランに対するシンの気持ち 憎いと思いながらも憎しみきれない あの時の気持ちに似ているのかもしれない ―キラ―に―ニコル―を殺された時のような アスランを憎みきれないからオーブの代表である彼女に憎悪の全てをぶつける どうしようもない事だと分かっていても心が付いて行かない それに彼―シン―はそれほど大人でもない 赤を纏っているとどうしても年齢など関係なってしまう傾向があるが彼はまだ己よりも年下なのだ あの頃のアスランもまた、感情を上手くコントロール出来ていたとは言えない しかし仮にも軍人なのだ 地位が上の者に対してあの口調はよくないと思う 「・・・・・・君のオーブに対する気持ちはまったくわからないでもない。俺も似たような経験はした・・実際、まだ心のどこかで地球軍を許せない気持ちもあるかもしれない。」 これは正直な気持ちだ そして 「君はどこか似ているな。俺にも俺の幼馴染にも」 「そんな言葉をもらっても嬉しくない」 「・・・だろうな。君の望みはなんだ?」 「俺の望みは一つです。貴方が欲しい。それだけだ・・・」 血のような紅の瞳に真剣に見つめられ 引き込まれるような感覚にアスランは頭を振り強引に思考をハッキリとさせる そうしなければ瞳の色に引き込まれそのまま流されてしまいそうだ 真紅の瞳 血を連想させる紅 紅は確か興奮色でもあったか、と記憶している 逃げる事は出来ないか。とアスランは軽く溜め息をはき自らシンへと近付いた 掠るように交わされた口付け まさかアスランの方からしてくれる等とは思いもしなかったのかもしれない そしてシンは思う ―そういえば、アテナは気高く知識の豊富な神であったけれど負けず嫌いな面もある神でもあった― と 先ほどの優しげな雰囲気はあるものの先程とは違い妖艶な雰囲気も出し―クスリと微笑むアスランを綺麗だと思った そして己もまた負けず嫌いで欲しいものは手に入れないと気がすまない性格である事も自覚している 至近距離で見つめ合い何が合図なのかほぼ同時に互いの唇を求めた 欲しいものは快楽―? いや、確かにそうかもしれないがそれ以上に欲しいものは居場所だったのかもしれない 翡翠の瞳を見たときから最終的な目的は変わらずも理由は変わったのかもしれない ―この人ならば己をわかってくれるかもしれない―と 同じような痛みを持つ人 痛みを分け合いたいなど生温い関係が欲しいわけではない ただなんとなく同じ空間にいたいだけ 舌を絡めあい呼吸さえも奪われてしまいそうな感覚 頭の芯から痺れる感覚に酔いそうだ 身体にもゾクリ、とした感覚が走りシンは下腹部に熱が集まるのを感じた 「・・・ンっ・・ふぅ、ハッ・・・ぁ・・・」 唇から漏れ耳の奥まで聞こえる息遣い 自分と同じように熱が篭っているのであろうと頭の隅で考えている自分に笑いそうだ 相手―アスラン―も同じ事を考えているのだろうか? それは分からないけれど、なんとなくそう思う。 唇を貪りながらシンはアスランの服に手を掛け脱がそうとしたがソレを拒むように手を掴まれ少しだけ不機嫌になる 今更、拒むのだろうか?―と思い それを相手も感じ取ったのか少し眉を寄せ小さな声で呟くように答えた 「此処では誰か来るかもしれない」 目の前の欲しいと望んでいた存在と状況で忘れていたが此処は誰か来るかもしれない―休憩室―なのだ 扉などないし、確かに誰か来るかもしれないし 来ても声を掛けられるか物音が立てられなければ行為に没頭してしまえば存在に気が付かないだろう チッ―とシンは舌打ちをしそんな姿にアスランは苦笑した だからと言って熱が収まれば楽なのだろうが納まる気配は無い チラリと時計に視線を向け 再びアスランに視線を戻す 「すぐに済ませれば大丈夫だろ?」 「俺は代表のボディーガードだぞ?誰かに見られたらマズイ」 「でも我慢できないし」 アスランは大げさに溜め息を吐くと 諦めたように身体の力を抜いた 「誰かに見られたらお前に襲われた。って言ってやる」 低い声でそういうとシンは了解。と言わんばかりにアスランの上着を脱がし 中に着ていた服もたくし上げるとその肌の白さにウットリとしたように肌に手を這わしていった 這わされているだけなのに背中にゾクゾクとした感覚が走りアスランは荒くなりそうな息を必死に押し殺そうと唇を噛み締めるが中々、上手くいきそうにない 眉を寄せ瞳を閉じるとヌルリとしたモノが薄い胸板を這い 時折、チクリとした痛みも走る 「っ・・・はぁ、ぁ・・見える・・とっに・・跡・・・付ける、なよ・・・?」 「さぁ?あんまり経験ないんで保証は出来ませんが努力はしますよ」 シンはソファにアスランを座らせズボンの上から主張しだしたアスラン自身を指先で形をなぞりギュっと包み込むように握りこんだ 「っあ・・シっん・・・」 甘ったらしい声を上げればシンは―クスリ、と笑い 少し手の位置をずらしズボンのチャックを下ろす ―ジーっという音が嫌なくらいに大きく聞こえ誰かに見つからないか、とドキドキと心音が五月蝿い 腰を少し浮かさせズボンと下着を膝くらいまで下ろし腰を浮かさせたついでにソファから下ろし膝立ちにさせた シンは肩にアスランをもたれかからせ己の指をアスランに舐めさせ濡らしていく アスランもそれに抵抗はないのだろうシンの肩に顔を乗せ吸い付くように指を口に含み舌を絡ませていくうちに口端から唾液が垂れ落ちる 「ん・・ふっ・・・ンん・・」 指を舐めている間にも勿論、空いている手はアスランの胸元を這い胸で主張している突起をグリグリと押しつぶすようにしたり爪で引っ掻いたりし漏れる声を聞き楽しんでいる 「もういいよ」 そう言うと、アスランの口から指を離す 指を口元から離す時、指と口元の間に銀の糸が出来 それがアスランを余計に妖艶に見せた その濡れた指をアスランの蕾の部分を円を描くようになぞり 慎ましやかに閉ざされた箇所を掻き分け指を挿入させていく 絡みつくような内壁の感覚に気分が良くなり指はいつの間にか2本に増えていた 「っあ・・シ、っぁン・・・」 「此処に手、付いて」 シンは指を引き抜きアスランを引き剥がすとソファの背もたれの部分に手を付かせ片膝もソファに乗せてやると自身を蕾へとあてがった ヌルリとした熱い塊がピタっ、とあてがわれアスランはそれを感じると―ハァっ―熱く湿った息を吐く 息を吐いた瞬間、身体の力が抜けシンはあてがっていた熱でアスランの体内を一気に貫いた 挿入の衝撃のせいかアスランの身体は一瞬強張り 見開かれた瞳から涙の滴がポロリと零れ落ちた 顔が見えないのは残念だとは思うのだがアスランの少し伸びた髪からチラリと見える項は酷くシンの心を煽った ソコへ紅い華を散らせば服では隠れず見えてしまうかかもしれないが今はそんな事を考えている余裕はない 咲かせても咲かせても咲かせ足りない 真っ白な肌に咲く紅い華 ただソレが見たかったのかもしれない 「あ・・んぁ・・・あ、ぁあ・・ひぅ・・・ン」 奥に狙いに定めながら速度を徐々に上げていくと息が更に荒くアスランを貪っていくのが分かってしまう 前立腺を抉るように貫いたり ワザとずらしたりとして相手にも快楽を与え己も快楽を貪る 「あ、ぁ、あぁっ・・・ンぁ・・」 甘い声は鼓膜に響き それはまるで興奮剤のよう シンの腰が動くたびにそれに会わせる様にアスランの腰も無意識に動いてしまうようだ 自身は限界を訴えるようにフルフルと振るえアスランの手にも力が入ってしまう 「んぁ・・・あ、シっん・・もっ・・・ぁあ」 アスランの言いたい事を理解するとシンはアスラン自身に指を絡めアスランを徐々に追い詰めていく アスランから放たれる甘ったるい声のリズムも張り詰めたモノへと変化しキュっと瞳を閉じた 「あ、ヒぁ・・・ぁン・・あぁあぁああ―――っ」 ギリギリまで引き抜き最奥へと突き上げるとアスランは欲望の塊を吐き出しソファを汚し中でもシンのモノから出た熱い飛沫を感じた ―カクン、と崩れそうな身体を支え室内でやたら息遣いが大きく聞こえてしまう シンが自身を引き抜くとアスランの身体は微かに揺れ 太股にツゥー、と中に吐き出したものが伝う アスランは床にペタリと座り込んでしまいシンの方へ瞳を向け 「・・・・っはぁ・・・ソ、ファ・・・汚れた・・・」 「・・・っもっと色気のある事を言えばいいのに」 「・・・っ・・仕方ない、だろ・・う?・・・」 不機嫌そうな瞳を向けても今の潤んだ瞳では効果は無く むしろ逆効果だろう 「じゃあ、コレは俺が綺麗にしとくから服着ときなよ」 返事はしながアスランはコクン、と頷きソファから少し離れた位置で乱れた服を正した 元から白っぽい色のソファなのだから簡単に拭いてしまえばそう簡単にはバレはしないだろうとシンは軽く拭きシンに背中を向けているアスランに近付き後ろから抱きしめるようにピタリ、と引っ付いた まさか抱き締められるように引っ付かれると思わなかったのかアスランの身体は一瞬、揺れるがその数秒後、溜め息を吐きシンの方へと視線を向け引き剥がそうとするが想像以上のシンの力に引き剥がす事が出来ない ムッとするアスランを無視するかのようにシンは腕を掴み休憩室から出て行く 途中、ルナマリアとすれ違ったような気がしたがシンはそんな事はどうでもいいようだ 今はまだ残る温もりと これからの事を想像してしまうと無意識に頬が緩んでしまう 二人はまだ始まったばかりなのだから今はただ運命に身を委ねればいいのだろうか―? 憧れはいつしか愛情へと変わり その人の本当の姿を見たとき ただ、どうしようもない感情に襲われた 護りたいと 辛いことをなにもかも隠してしまう人だから 自惚れかもしれないけれど 俺があの人の支えに己がなれたら、と・・・ END |